なぜ売れない?
日本自動車輸入組合の統計資料を見るとサターンの登録台数は年間1,000台程度。 カローラなら1週間で売ってしまう数である。国産と輸入の差はあるが、どちらも世界最大手のメーカーが日本国内で売る大衆車だ。 輸入車1位のVWが年間約60,000台。サターンは高価なMercedesやPorscheよりも希少である。 1リテーラーが月間に販売する台数は0〜5台位か... いったい何故ここまで売れていないのだろうか?

「なぜここまで売れていないのだろうか?」はっきり言って「売る気がない」からである。 とゆうか、外から一般の視点で見れば「売る気があるようには到底見えない」のである。
最初に誤解するといけないので断っておくが、サターンリテーラーのセールスコンサルタント、サービスともに十分やる気があるように見える。 店に行ったら欲しくなってしまうし、スタッフもサターンを売る自信がある。しかしそんな素晴らしい店に客を呼べない責任はフランチャイズ本部のサターンジャパンにある。

TVCFも最近はまったくしない。日本発売当時と3ドア発売時、その間少し、マイナーチェンジ時ではないだろうか? おまけに購買意欲をそそらない大変ヘタクソなCFである。

凹んでも元に戻るドアパネル「だから何だってゆうの?」それ故のメリットを伝えていない。それでサターンを選択した人は少ないだろう。 どちらかとゆうとドアパネルが樹脂などはCFで説明すべきことではなく、他のサターンの魅力を演出し「その魅力の原因は樹脂パネルにあった」という程度でよいのではないか。

3ドアのCF「地下鉄ポスター編」は良かったのは印象だけだった。セダン・ワゴンならユーザは使い方が解るが、 3ドアというまったく新しいクルマの形を出すに当たって、何にもCFを見る人に提案をしない。例えば、サターンジャパンに請求すれば送ってくれたビデオ「From Saturn」では、 具体的に3ドアの使い方(子供、ぬいぐるみ、犬、楽器...)を見せていた。このように新しいものには現実的な使い方を提案しないと消費者は動きようがない。 あれでは見てる者も「ふーん、変わってるねぇ...でも何に使えるの?」ってなってしまう。雑誌の広告も然りで、空港ターミナルの道路に、ただ3ドアを開いたクーペがあるだけ。 ああゆうのは普通、広告とは言わない。

本来運転席側にあるべき3ドアをそのまま日本に持ち込んだのだから、3ドアは助手席側になった。アメリカではビジネスマンやキャリアウーマンがブリーフケースを 放り込むには都合がいいが、日本ではまったく使い方が変わってくる。それを「From Saturn」ではよく表現していたではないか?「From Saturn」をTVでガンガン流せばかなり印象が違ったと思う。
T社の様に品のない媚びた広告をする必要もないが、もう少し「それじゃ、見に行ってみよう」という気を起こさせる CMは出来なかったのだろうか。特に3ドアクーペは今までにない新しいカタチなのだ。いくらでも見せ方はある。徹底的に考えた末があのCFだったのなら悲しくなってしまう。

今の日本の若者はミニバン、セダンが大好きなのだ。2ドアクーペなどトヨタさえソアラを止めたいと思ってる程売れない。 3ドアクーペはそんなクーペの低迷を払拭できるくらいに画期的な商品力があったのではないだろうか? ハッキリ言って悲しくなるくらいアピールが下手すぎる。 また、セダン・ワゴンにしても、あの値段で十分な品質とサービスが受けられ、アメリカの雰囲気も付いてくるとってもお買い得な輸入車である。何故良いところをアピールしなかったのだろうか?

2000年モデルSL2のTVCFはさすがに変えてきた。最後の「新しいサターン。見に来て下さい」はとってもいい。まず店に来て貰わないと話にならないから... でも「新しい女房のサラ...」には思わず苦笑してしまった。 新車購入というおめでたい席に離婚を連想させる「新しい女房...」を持ってくるとは、いささかブラックである。これでは日本人は引いてしまうよ。

このことは、1999年11月にサターンジャパン主催で行われた数名ユーザが対象の「グループ・インタビュー」に参加させて頂いたときにも出ていた。 TVCFも全部流して見たが「印象はいいが、何のCMか判らない」と多くのオーナーですらこうだ。CI戦略はもういいから商品をもっとアピールしなきゃ!結局「売る気があるのか?売りたくないのか?」に尽きた。
「これほど売れないクルマをどうして買ったのですか?」「どうしたら売れるようになりますか?」とサターンジャパンとの深刻かつ熱意のある突っ込んだ討論になると予想していた。 もちろん当日の参加者はボクを含め、皆サターンを好きで買ったユーザである。売れるための意見や知恵を積極的に出そうと用意もしてきたのに、あまりに突っ込みのないお茶会にガッカリしてしまった。 「サターンプロジェクトは約15年の年月を経て時代の変化とともに、GMとしてあまり力の入らない仕事になってしまったのだろうか...」とも邪推してしまった。

肩透かしを食らって欲求不満のボク等は、帰りに恵比寿駅近くのレストランでビールを飲みながら、今度は数名で今日のグループ・インタビューを肴に「グループ・ディスカッション」をした。